1997年、日本の鉄道史上に前代未聞の出来事が起こった。複線電化の「幹線」に廃止区間が出たのである。それは信越本線横川−軽井沢、補助機関車なしでは列車が通過出来ない特殊な区間だったとはいえ、新幹線の開通で在来線が廃止になったのは初めてだった。そして、今後開通が予想される新幹線については、並行在来線がすべてJRから経営分離されることが決定している。
政府が線路の建設を決め、その経営を押し付ける・・・いったい何のための「民営化」だったのだろう。
ひとまず鉄道ファンの視点を離れても、自治体が主張するように「新幹線が地域活性化につながる」とはどうしても思えない。各自治体は並行在来線の廃止に反対しており、当然それらは第3セクター方式での存続とならざるを得ず、結局は自治体の財政にのしかかってくる。経済効果だけを考えるなら、高速道路の方がはるかに有効だ。同じ採算の合わぬ事業であっても、新幹線と違い道路は人も物資も運んでくれる。片や、完全立体交差全線複線電化、ところが列車は1時間に数本・・・上越や東北新幹線の末端区間を見れぱ、いかに無駄が多いか、一目瞭然ではないか。
今回着工の決まった区間がすべて開業した後、在来線はどうなるのだろう?
北陸本線(金沢−直江津)と東北本線(盛岡−青森)については、JR貨物からの線路使用料という安定収入が見込め、経営分離後も「当面は」安泰と思われる。10年後の利用状況次第では、カタカナ列車2本に「日本海」「北斗星」辺りの寝台特急列車も存続が望めるのではないか(後記。2012年3月に「日本海」は不定期化)。危ないのが鹿児島本線で、博多−熊本といった「通過旅客」を失った後、どこまでやっていけるのか見当がつかない。八代以南の全線存続は絶望、下手をするとそれ以北でも分断されることになろう(後記。気動車運転となったものの当面は全線存続)。予想が難しいのが信越本線(豊野−直江津)。現時点でも通過旅客はそう多くない筈で、行く末は自治体の対応次第というところか。
(写真は北陸本線 倶利伽羅−石動 1988.8.16 この「特急街道」にも幕が下りることになった)
100%廃止間違いなしの線区がひとつある。
それは、第3セクターの北越急行。整備新幹線着工凍結の流れを受け、上越新幹線と北陸地方を短絡する目的から最高速度160キロの「超高規格在来線」として華々しく開業したものの、状況一転、最短で余命12年(どうせもう少し延びるとは思うが)の宣告が下された。難工事で名を馳せた「鍋立山トンネル」もやがては廃線トンネルとしてコンクリートの蓋をされる運命にあるようだ。
短命でも「白糠線よりは役に立った」と無理に納得するのは、あまりにも空しい気がする。
(後記。北への新幹線がどこまで伸びるか分からない状況になってきた。高度成長期に建設されたインフラが老朽化し、補修するカネがないと言われているのに、なぜ税金無駄遣いの極致
である整備新幹線建設が止まらないのだろう?)
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