物心ついたばかりの頃はともかく、自我の確立する頃からヒネクレ者を自認している。甲子園球場の統率が取れ過ぎた応援が嫌いで、大阪生まれの大阪育ちでありながら阪神タイガースが好きになれない。
今年(2002年)はサッカーのW杯が日本と韓国で共同開催。「作者プロフィール」のところに「下手糞なサッカーはつまらない」と書いてあるが、下手糞な国内リーグが誕生したお蔭で、世界的な大会もテレビの地上波放送で流れるようになり、世界一流の技を見てサッカー観戦の楽しさを知ることが出来たのだから、その意味ではJリーグさまさまである。
その世界的大会 − 世界最大のイベントと言われるW杯が日本でも開催され、リアル・タイムでのテレビ観戦が出来るのだからこれも有難い話ではあるのだが、ここでも「ニッポンニッポン」の気違いじみた声援が耳障りで仕方がない。あれを聞くと、どうしても「煩いからとっとと負けろ」と言いたくなる。なにしろ、日本戦を見なければ済むという程度の話ではないのである。試合もない日に、ニュース(スポーツ・ニュースではない)で「今日の日本代表」を延々とやる。スポーツ観戦の大好きな筆者がうんざりしたのだから、サッカーに興味のない人はさだめし呆れただろうと思う。
とっとと負けろ、の思いから結局日本戦を見ていると、サポーターがなぜかイタリア・オペラの大合唱をしている。なんじゃこりゃ? と首を傾げていたら、どうも中田英寿が在籍するイタリア・リーグでの応援の何も考えずに持ち込んだらしい。
あのねえ。あれはイタリアにおける「おらが国さ」の音楽なの。日本代表に対する声援としてはどう考えても意味を成さないのダヨ。
マスコミは『素晴らしい応援』と手放しの喜びよう。へんな国だねえ、日本は。
……と思っていたら、韓国のサポーターがポルトガル戦で同じことをやっていた。日本のように馬鹿の一つ覚えではないものの、ベートーヴェンの「歓喜の合唱」をやったりしている。ヨソの国は海の向こうで国家意識の育ちにくい日本と違い、北朝鮮と国境を接し、外国に侵略・占領された経験を持つあの国がなぜ? 対戦予定を見ると、韓国は決勝トーナメントでなんとイタリアと対戦するではないか。大丈夫か? イタリア戦で「アイーダ(イタリア・オペラ)」の大合唱なんかやったら世界中の笑い者になるぞ。
妙な心配をしながら試合当日を迎えたが、さすがにベートーヴェンもヴェルディもなし。国内でマスコミにでも指摘されて修正したのか、ポルトガルは第三国だからよしという判断なのか、ちょっと分からない。ヴェルディ「アイーダ」はともかく、ベートーヴェン「歓喜の合唱」の場合は内容的に反ナショナリズムの象徴ともなり得るから、ドイツ戦でやったところで(2度ばかりやっていたようだ)必ずしも不適切とは言えないけれど。
ともあれ、日本がイタリアと対戦せずによかったねえ。
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