●なくなってホッとした快速「海峡」
とうとう、JRグループ全線から定期の「普通客車列車」が消滅した。多少の感慨はあるものの、個人的には「普通客車列車は筑豊が最後」という感覚で、海峡線の方は「電車特急になってせいせいした」気持ちの方が強い。
なにしろ、末期は既に快速「海峡」なんていうものではなくなっていたから。
先日、「鉄道ジャーナル」を立ち読みしていたら、列車追跡のコーナーが「海峡」であった。それによると、案の定「ドラえもん列車」には批判もあり、殊に乗客全員お子様扱いの車内放送にはクレームも多かったらしい。
なくしたらなくしたで「楽しみにしていたのに」という声もあって云々……ということだったが、なぜ全列車全車両でなければならなかったのか。なぜ一部車両だけで実施しなかったのか。
客車は最も短いときで4両あり、1両が海底駅見学用だったとしても3両あった。1両を指定席自由席半分ずつの「ドラえもん車」とし、増結時は一定割合で増やしていけばよかったのだ。
改正後、急行「はまなす」座席車の目を覆いたくなるステッカー類はきちんと剥がしてくれたのだろうか。少々気になる。(写真は函館駅で 1990. 3. 2 廃止前、本来の美しい姿で走る機会があったのかどうかは知らない)
●国土交通省の二重基準
これも「鉄道ジャーナル」立ち読みで知ったのだが、東海道新幹線で、新聞に載らない重大故障が2度も起きていたらしい。なんと、ATCの自動減速が作動せず、それに気づいた運転士が手動で緊急停止させた、というのだ。
これを掲載しないとは(1紙だけごく簡略に掲載した由)、新聞の担当記者どもは何を考えているのか。東海道新幹線の運転密度で、これが事故につながらなかったのは単なる幸運でしかない。故障を起こしたのは共に最新の700系車両で、2度目の故障があってようやく「全車両の点検」を行ったらしいが、記事が限られているのでそれ以上の詳しいことは分からない。
繰り返すが、これが事故につながらなかったのは単なる幸運である。そして、もし事故につながったらどれほどの惨事になったか、想像するのも恐ろしい。
一方、まったく異なる原因で、まったく異なる経過で2度の衝突事故を起こした京福電鉄福井支社は、お役所の指示で全線運行停止を命ぜられ、その結果、鉄道会社としての息の根を止められた。
その基準でゆくなら、東海道新幹線は全線運行停止、少なくとも700系車両は原因究明が終わるまで全編成運用停止が指示されてしかるべきではないのか?
筆者個人としては「同じ経過による事故」を繰り返したのではない以上、京福電鉄への「全線運行停止指示」は行き過ぎだと考えている。そこへ、東海道新幹線の重大故障は「お咎めナシ」ときた。いったいどういうことだ?
新聞に載らなかったのは、担当記者があまりにも無知なのか、どこかから「記事にするな」という圧力がかかったのか……(東海道新幹線が止まったら困るだろうから)。
原子力発電所のトラブル隠蔽問題(新幹線のことと違い知識が全くないので、何を主張するつもりもない)にせよ、実際にどれだけ安全が脅かされたかよりも、どれだけマスコミが騒いだかによって、お役所の対応が左右されているように思えてならない。
(後記:その後、山陽新幹線で運転士が走行中に居眠りするという事案が発生した。このときにはテレビや新聞が大騒ぎし、警察まで出動する始末。当該の運転士が処分を受けるのは当然としても、これによって安全が脅かされた訳ではなく、本文にあるATC不作動の方が比較にならぬほど危険なのである)
さらに後記。2018年6月、山陽新幹線で「のぞみ」が高速走行中に線路内で人をはね、死体はコナゴナ、車両も先端部が損傷するという凄まじい出来事があった。運転士は「鳥が衝突」と判断して運転を継続(当然というか自然な発想である)、これをメディアがまたしても叩き始めた。しかもなぜか"人身事故"だそうな。新幹線の線路は立ち入っただけで「違法行為」なのであり、犯人死亡の列車運行妨害"事件"というのが正しい筈なのだが。
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