窓口係員との闘い

 言い古された言葉ではあるけれど、科学技術の進展というのは日進月歩で、ことに通信の分野では10年前の状況さえ原始的に思われてしまう。携帯電話の普及率を考えただけでその差は歴然とするし、まだ「Windows95」もないのだから。
 鉄道の世界でも、新幹線を筆頭に陽の当たる部分では相当の進歩が見られる。
 あまり言及されないところでは、乗車券や指定券を打ち出す「マルス」の端末が随分と良くなった。JR各社で差異はあるようだが、JR西日本の窓口を見ている限り、複雑な経路の片道乗車券、あるいは臨時列車の指定券など、以前に比べ入力がかなり楽になったように見受けられる。
 しかし、である。機械がいくら良くなっても、使う人間がそれについて行ってくれなければなんの意味もない。
 昨年(2002年)、東北新幹線延伸による盛岡〜八戸間経営分離をJR東日本も意識したのか、夏の東北は久々に臨時列車の花盛りとなった。筆者が注目したのは秋田発青森回り上野行寝台特急「夢・夏祭り号」である(編成は「北斗星」用個室寝台車・開放型寝台車に「夢空間」車両を加えたもの。但し食堂車は非営業)。
 ルートの面白さもさることながら、同じ夏祭り関連の臨時列車、急行「東北夏祭り(折り返し回送列車)」や特急「ねぶた」、急行「お祭り北東北2号」と次々に行き違ってくれるというのがまた魅力的だった。
 ところが、せっかく発売開始日の10時ちょうどに端末を叩いてもらったのに、「マルス」のホスト・コンピュータに接続出来たのはなんと10時27分(当然満席)。その間、窓口担当者は延々と「列車関連誤り」というエラーを出し続けたのである。
 かつて「トワイライトEXP」や「北斗星」等では、発売開始日に満室であったA個室を1週間前辺りに確保出来たことも多かったが、何度となく窓口に当たったのに、とうとう「夢・夏祭り号」は取れなかった。
 JRの窓口は、客から端末のモニターが見える場合が多い。しかし、旅行会社の場合、端末が奥まった位置にあるので、状況が分からず、要注意である。
 というのは、ホスト・コンピュータへの接続がうまくいかないとき、係員が面倒臭がって「満席」と答えることが実際にあるのだ。難関(?)列車をサッと確保してくれた係員もいるので、会社名や支店名は伏せるが、入力がややこしそうな臨時列車にもかかわらず、注文用紙を出してから「A個室B個室とも満席です」の回答がくるまであまりにも短時間だったため不審の念を抱き、その足で駅窓口の行列に加わってみたら、案の定、
「第1希望のA個室が取れました」
 という結果だったのである。
 ふた昔前の「マルス」端末は、帳面状の金属板に列車名が印刷してあって、そこへピンを差し込むという入力法だったから、表示のない臨時列車となるとたちまち「お手上げ」、ひどいのになると「そんな列車はありません」などと言い出したものだ。
 JR西日本の最新端末の場合、駅名も列車名も頭文字を入力すれば候補の一覧が表示されるので便利になった。その代わり、駅名が読めないと入力出来なくなり、某駅の女性係員に「弘前」の読み方を尋ねられたのには恐れ入ったけれど……。
 遠からず、整備新幹線がらみで在来線路線網はさらにズタズタとなり、係員が音を上げるような臨時列車そのものが消滅するかもしれない(後記。その通りになった)(画像は小樽に停車中の臨時寝台特急「北斗星ニセコスキー」)

その後、JR西日本の窓口ではモニターの見えないところが増えてきた。もっとも、年齢が40を越えて視力が急降下したこと、「みどりの券売機」が高機能化したことで、実害はなし。

 

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