改正号時刻表雑感

 故・宮脇俊三氏は「ダイヤ改正号の時刻表を読み耽って徹夜したこともある」と述べている。筆者も十代の頃は、ダイヤ改正号を買ってから数日間は忙しく、中学生のときには膝の上に置いた時刻表をめくりながら食事をしていて母親に叱られた記憶がある。
 最近の時刻表は読むところが少ない。
 とりあえず、その理由については年齢的なものが大きいということにしておく。国鉄時代の時刻表は面白かったなどと書き始めると話が先へ進まない。
 長いこと『鉄道ジャーナル』という月刊誌を購読していて、営業規則の変更はかなり正確に把握していたものだが(確か「ズームレンズ」という名前のコーナーだったと思う)、買わなくなってからは時折まごつくことがある。常磐線と東北本線の「選択乗車」や、播但線経由の特急「はまかぜ」利用時に福知山線経由の運賃・料金で計算出来る特例がいつの間にかなくなっていたり……(後記[訂正]。「はまかぜ」は引き続き福知山線経由で計算。時刻表の説明が曖昧になっているが、往路「はまかぜ」、復路「スーパーはくと」の場合は従来通り片道乗車券で可)。
 
ひとつ気になって仕方がないのが「指定券の変更」に関する説明。『その時に発売しているどの列車の指定券にも変更できます』という非常に明瞭な表現だったのに、しばらくぶりに確認したら、『同じ種類のきっぷに変更できます』という曖昧なものになっていた。これは規定が変わって寝台券→指定席券というような変更が不可能になったのか、単に言い回しを変えただけなのか、さっぱり分からない。
 例えば、既に寝台券を用意した「銀河」をやめて新幹線にしようとするとき、一旦キャンセルしなければならなくなったのだろうか? 現場係員の知識はあまり信用出来ないし、営業規則を調べるのも面倒臭い。
 規定変更の可能性を疑うのは、以下の事例による。
 A個室寝台券を確保して出発を心待ちにしていたら、仕事の都合で直前に旅行を中止する羽目になった − というようなとき、前日にキャンセルすると30パーセントもの手数料を取られる。しかし、何でもいいから快速列車の指定席券に変更すれば、300円〜510円の損失で済むのである。規則として指定券は乗車券と同時に購入しなければならない(空文同然だけれど)ので、杓子定規に考えれば不正行為ともいえるが、これも「未使用日の残った青春18きっぷ」を持っていれば完全に合法、ということになってしまうし、文句があるなら「ムーンライトながら」ひと駅分で乗車券も一緒に買おうじゃないか、などという逃げ道もあるから、これを阻止する狙いがあるのかもしれない。
(買った切符を使わないのは単なる権利放棄で、不正でも何でもない。念のため)
 ついでに、これも不可能になってしまったかもしれない「裏技中の裏技」を紹介しよう。
 現在、JR西日本のマルス端末は座席番号のABCD(E)を入力して該当座席の空席照会が可能である。しかし「日本海3号」のA寝台で夜明けとともに日本海を眺めたい、となると偶数が海側、奇数が山側なので困ってしまう。番号の希望も可能ではあるけれど、奇数・偶数の照会機能はないから、4番は空いているか? 6番は? という入力法になってしまい、窓口係員への負担が大きいし時間もかかる。そこで、思い切って二人分A寝台券を買ってしまう。乗車券(周遊きっぷ等)は出発直前に買えばよいので、その費用を一時的に流用すればフトコロ具合にも大きな影響は与えない。「トワイライト」なんぞと違い、発売開始日に買えば必ず「続き番号」が出てくる。そこで偶数番の寝台券を手元に残し、奇数のものは実際に乗る別の特急券等に変更して差額を返して貰えば万事解決! 厄介なのは「きたぐに」編成を使った臨時の寝台急行で、過去には神戸発着で運転された年があり、車両基地から始発駅へ回送する経路の関係から、大阪発着の場合と編成の向きがひっくりかえってしまうので実にややこしい。確か1990年、大阪駅に「座席番号の下見」をしに行ったこともある。(写真は線路工事による計画遅延で撮影可能時間帯に新疋田を通過する上り「きたぐに」)
 大阪に住んでいて、所用で東京に行ったその足で東北旅行へ、というとき、用を済ませたその日のうちに「ホームタウンとちぎ」を利用、宇都宮で一泊して翌朝の「こまち」に乗ると、都区内より宿泊費は安い、乗継割引が利くので特急券も安い、味気無い新幹線に乗る距離が縮む(これは余計)、と一石三鳥くらいの効果があったのに、商魂たくましいJR東日本が乗継割引適用を大幅に縮小したので効果が薄くなった。
 こうした「合法的裏技」は選択肢が減る一方である。世間の風当たりを気にしなくて済む絶好の実質値上げ、といったところか。
 やれやれ、ピンクのページ(営業案内)の話ばかりになってしまった。
 列車の設定に関しては、唯一にして最大の疑問点が、寝台特急「なは」である。西鹿児島(鹿児島中央)まで行かなくなったのはやむを得ないとしても、なぜ熊本止まりなのだろうか? 熊本から「プッシュプル運転」にして新八代の乗換ホームに着けろ、とは言わないけれど、在来線ホームに停めて八代発着にすればよかったのでは? これでは「夜行列車で鹿児島には行くな」と言ってるようなものではないか。
 個人的には、観光面で「北国志向」であるうえに、JR九州の車両デザインが大嫌いなので実際に行くことはまずなく、どうでもいいや、という程度のことではあるものの、釈然としないのは確かである。

後記。「なは」は列車自体が廃止になり、臨時寝台急行もほぼ消滅し、「こまち」は宇都宮に止まらなくなった。指定券の変更に関するJTB時刻表巻末の記載は、気がついたら『そのとき発売しているどの列車にも変更できます』に変わっており、元へ戻ったといってよい。苦情がきたのかもしれないが、分かりにくい変更は何だったのだろう。

 

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