10年間、相当の酷使を続けたワープロ専用機が、そろそろ寿命を迎えたらしい。単行本3冊分以上に相当する(実際に2冊は本にした)フィクションをこの機械で打ち、ユーザー辞書も自然と増えていったのだが、あるとき突然、いつもの変換が出来なくなったと思ったら、画面下の日付表示が「1993年11月1日(月)」になっているではないか。
初めは深く考えずに日付を直し、FDにバックアップを取ってあったユーザー辞書も復旧させたのだけれど、一旦電源を切って再度使おうとすると、またもや初期設定に逆戻りしている。
10年半だものなあ、と誤表示の日付をみながら感慨に耽った。その間、プリンタの用紙検出センサが故障して一回だけ修理に出している。経年からみてこれ以上の修理は無駄だろう。
バソコンを買った頃、店頭にワープロ専用機も並んでいるのを見て、筆者のようなアマチュアを含めれば「もの書き」人口は相当なものになるだろうから、専用機にも相応の需要はあるのだろう、と楽観していた。それと前後して、新聞に「シャープ、強気のワープロ専用機製造継続」とあるのを見て、強気の、は余計だろうとも思った。
それから4年……。
試しに、インターネットで「書院」を検索してみたら、驚くべし、出てきたのはPower書院というパソコン用ワープロ・ソフトのみ。
「文章を打つだけならワープロ専用機の方が便利だし目が疲れない」
こう言っている人を筆者の周囲だけで3人知っているんだがなあ。逆に、3人しかいないという見方も出来る訳か……。
無いものは仕方がないので、モニタを液晶に変え、ワープロ・ソフトを入れて「パソコンの『書院』化」をやればいいやと思いきや、なんたることぞ、Power書院は2003年末で製造打切、販売店に調べて貰ったが既に在庫もなし。
ワープロめ、こんなことなら去年中に壊れておいてくれたら、と考えたのは一瞬のこと。2003年末なら中編小説が猛スピードで進展していた時期だったから、あのときにワープロが機嫌を損ねたらそれこそ大迷惑だったろう。ものは考えようである。
富士通がワープロ機種名を受け継いだソフトをまだ売っているのは、以前からパソコン・メーカーでもあったためか。
それにしても癪に障る。
いったい、何のための機械なんだ? 個人それぞれが自分に合った「使いやすい機械」を選ぶということが出来ずに、世界標準とやらの機械にどうして人間の方が合わせなくちゃならんのだ?
パソコンのモニタを液晶につけ替えはしたけれど、この文章もまだ辛うじて生きているワープロ専用機で打っている。なにしろ我流のタッチタイピングで、ローマ字入力は日本語のリズムにならないから文章が下手になる、という勝手な説を打ち立て、結果としてヘンテコな早打ちになってしまったから、パソコンの慣れないキーボードだとすぐカーソルがあらぬ方向へ動くし、意図と違う字が出てくる。ワードパッドというソフト自体、何がどうなっているのかさっぱり分からない。
新しく買った液晶モニタがこれまた厄介者で、輝度を最低に設定してもワープロ専用機の「暗」モードより眩しいのは後者の経年劣化による差異か? 「ブライトネス」を調整して文章を打つのに適当な明るさ、というか暗さにしてみたら、そのまま自分のサイトを表示すると画像なんぞ真黒である。モニタの設定ボタンは極小サイズで、使い道によっていちいち明るさの変更なんぞしていられない。
まだ使えるブラウン管モニタを捨てるのだってもったいないし、苦肉の策として中古の拡張ボードを買い、マルチ・モニタにしてしまった。グラフィック・アクセラレータ? なんやねん、それ、という水準の知識で、必要なパーツの調達からパソコン設定まですんなり成功したのは奇跡的である。
もっとも、まだワープロ専用機も電源OFF時のメモリが「死んだ」以外は動くので(あらゆる機能でエラーは頻発しており、完全に使えなくなるのも時間の問題か)、マルチ・モニタの設定を終えたきり、ブラウン管モニタは電源を入れてもいないけれど。
最後にお願い。
読者の中に「Power書院」CD−ROM版をお持ちの方がおられたら、是非ともご連絡をいただきたい。製造が打ち切られた以上、違法コピーだと言われる筋合はない。
後記。その後、結局ワープロ専用機を修理に出した。比較級の問題で液晶モニタの方がブラウン管より目の負担が少ないのは確かなので、無駄な投資だったとは思っていない。結果的には、Windows98搭載のパソコンがワープロ専用機より先にオシャカとなった。予期しなかったことに、Power書院をお持ちの方から実際に連絡が一件(このページを公開してから4年後のことで、既にパソコンの経年が相当なものとなっていたので辞退)、入手出来たのならコピーさせてほしいという連絡を一件頂戴した。
ワープロ専用機WD-A850は2023年まで現役で"稼働"し続けたものの、FDDに続き液晶がやられてしまい、2024年、とうとう粗大ゴミとして"廃車回送"されて行った(画像は廃棄直前の状態。一眼レフで撮ったデジタル画像ではぼんやり初期画面が見えるけれど、肉眼ではほとんど見えなくなっていた)。
調べてみると、やはり専用機需要はあるようで、再生中古品は流通している模様。同人誌作家を続けていたなら"買替更新"を行ったろうけど……。
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