文章を書くとき、どういう読者を想定するか、というのは案外と厄介な問題である。毎回毎回引き合いに出してうんざりされるかもしれないけれど、宮脇俊三の諸作品を読んでみても、その「苦悩」は窺える。
書き下ろし単行本『時刻表二万キロ』なら話は早い。旅行や時刻表に関心のない人が、かような書物を購うことは考えにくいからだ。その後、月刊誌への掲載が主となってからは、随分と神経をお使いだったと察する。例えば『豪華列車はケープタウン行』に掲載された作品群は、もともと『オール讀物』と『文芸春秋』のために書かれたものである。『時刻表二万キロ』の文章と比べて見れば(書かれた時期にも開きはあるが)、想定された読者の違いがはっきりと見て取れる。
実は、今回の文章を書くに辺り、初めのうち無用の苦労を重ねてしまった。
"同人誌作家"時代が長かったこともあって、つい「不特定多数」の読者を想定し、難しくて途中で投げ出しかけたのである。ところが、よく考えてみるとこの文章はインターネット上でしか読めない訳だし、写真主体のサイトを専らフル・ブラウザ装備の携帯電話で見ているとも思えない。つまり、読者はパソコンに関して最低限の知識は持っていると判断してよい訳だ(筆者自身、最低限の知識しかなく、だからこそ「騒動」になる)……そう考えるとやっと筆(?)が進みだした。
2月末のこと、とうとうWindows Vista搭載のパソコンを買った。
筆者は部屋に固定電話を引いていないので、PHSの音声端末を通してインターネットに接続している。そのことも影響して、Windows98からVistaへ何世代も後のOSに切り替えるとなると、世界がひっくりかえったような有様になった。
公式発売の直後、某量販店の係員に「USB1.1の周辺機器は一切Vistaで使えない」という誤った情報を教えられたりして(鵜呑みにして表紙の更新情報欄に書いてしまった)、混乱に拍車がかかったが、とにかくモデム(元のPHS端末はパソコンとの接続ケーブルがモデムになっていた)・スキャナ及び付属画像処理ソフト・FTPソフトは使えなくなることが判明。とてもじゃないけれどこれらをみな新調する予算はなく、まだ使える周辺機器の廃棄は馬鹿らしくかつもったいないので(FTPソフトも4年ほど前のヴァージョン・アップで「値上げ」されてしまい更新は有料)、当面は98と併用することにした。
となると、PHS端末も98とVista双方に対応していないと困る。
USB接続のデータ専用端末とシンプルな音声端末に「無線通信モジュール」を差し替えて使う、という形は魅力的だったが、あいにく98には非対応である。あまり選択の余地なく多機能音声端末に落ち着いた。
実は電話の機種変更も初めてで、元の端末を買ってから6年半が経過している。それだけ長期間使っていればたいていの機能は説明書ナシで使えたから、「新しい機種もPHS音声端末であることには変わりなく、どうせ基本的な操作は同じだろう」と思いきや!
一般知識としては頭に入っていたけれど、もはや「電話」ではなく小型のパソコンと化していることを改めて痛感させられた。電話機単体でのインターネット閲覧に関しては未だによく分かっていない。
画像は併用中のパソコン2台(PHS端末のモバイルカメラで撮影。以前の端末にそんなものはむろん付いていなかった)。ともにSONY製、PCV-J11(下)とVGX-TP1(上)、モニタは共用。カタログを見たときは妙な筐体に笑ってしまったが、小型で場所を取らないのが何より気に入った。蛇足ながら、下のダンボールは処分し切れなかった自費出版の小説集(苦笑)。
Windows Vistaに関しても事態は同じであった。
電話機付属のセットアップ用CD−ROMが自動では使えず、手動でドライバをインストールする際の説明書(しかも電子マニュアル)もXP用しかない。電話会社の係員は「○○に電話して頂ければサポート致します。接続料・通信料はかかりません」と言うけれど、この手の電話番号へそう簡単に繋がらないのは幾度となく経験している。とりあえず自力でのセットアップを試みたら、久方ぶりの新しいOSとあってXPとVistaの段差はことのほか大きいらしい。XP用の説明を読む限り、98の操作と大きな違いはないようなのだが、Vistaになると……
「ありゃ? マイ・コンピュータがない」
「デバイス・マネージャはどうやって開くんだ??」
ダイヤルアップ接続を設定する際に肝心の電話番号を間違え、入力し直そうと接続先のアイコンを右クリックしたら反応がない。ダブルクリックしてみても「インターネットへの接続」ダイアログボックスが現れるだけで修正が出来ない。
仕方なくゼロから設定をやり直し、メール・ソフトをいじくっているときに全くの偶然から削除方法を発見するまで、10日間ばかり「接続不能の接続先アイコン」を放置するしかなかった。
昔話の浦島太郎は300年後の世界に飛んで悲哀を味わったけれども、現代ならば30年で十分ではないかと思う。
後記。Windows VISTAもダイヤルアップも昔話となりました。2018年にはPHSまで新規契約を終了。ギリギリまで引っ張ったお蔭で(?)、070の番号をそのまま引き継いで"ケータイ"に移行完了(安堵)。
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