NHKの病理

 NHKの偏向ぶりが目に余る。
 メディアがときの政権から距離を置き、批判的な立場なこと自体は当たり前である。逆を想像してみるとよい。中国か北朝鮮みたいになってしまう。問題は、批判の内容があまりにも民進党・共産党の主張と重なっており、かつ両党に不都合な真実は一切報じないことである。インターネット時代には逆効果でしかなく、むしろこれが若い世代の内閣支持率を押し上げる要因になった(後記。民進党? 台湾の政党か? ということに遠からずなりそうなので解説しておくと、2016年に野党が離合集散を繰り返す過程で生まれた、事実上は"民主党"から党名を変更した政党である。2017年秋の衆議院解散で「国会も開かず解散するのは敵前逃亡だ」と政権を批判した直後、自分たちは選挙戦で敵前逃亡を図り、人気の出そうな新党への合流に失敗して空中分解した)
 可能な限り好意的に解釈すれば、政権交代が非現実的であった時期に「特定の野党を攻撃してはならぬ」という自主規制を行ってきたのが、内部に蔓延る左翼傾向職員に悪用されているということになろうか。
 世論調査の項目を見ると「内閣支持」に関する選択肢に「他よりよさそうだから」というのがある。
 これも政権交代が現実のものとなった現在では不適当だろう。"他"というのが「与党にいる別の人」を指すのか「野党のトップ」を指すのか、区別して貰わないと世論調査の意味を成さない。本当は「内閣を支持するか否か」の一括りではなく、外交と内政くらいは分けて調べて貰った方が政府側にとっても有意義ではないかと考えるのだけれど、諸外国とあまり違ったやり方も具合が悪いのかもしれない。
 余談ながら、デジタルネイティブ世代は支持率9%や7%の内閣があったことを知っているだろうか? (答えは竹下内閣・宇野内閣、数字はまともだった頃のNHKによる)
 筆者自身は、安倍内閣の「内政」についてはあまり支持していない(外交は大健闘だと思う。民主党・鳩山政権がトランプ政権と重ならなくて本当に良かった)。原発再稼働を淡々と進めているという成果を除外して考えたらはっきり「不支持」になる。アベノミクスは総論賛成・各論反対で、個別の政策を見ればロクなことやってないじゃないか! と言いたくて仕方がない。国土強靭化と称して人口減少時代に高速道路の新設に熱をあげているのことなど愚の骨頂である。
 新幹線と高速道路の建設をやめ、高度成長期に造られた老朽インフラの改修に人材と資金を回す、鉄道貨物インフラを(小手先ではなく大規模な国家プロジェクトとして)再整備し物流における人手不足の解消と温室効果ガス排出減を図る、と言い出す政治家が出てこないものか。
 仮に世論調査の対象に当たったら(宝くじ並の確率?)どうするか……朝日新聞とか毎日新聞とか名乗られたらその時点で通話を切りそうだし、そのほかなら考えた挙句に「支持」と答えることになるだろうな、外交・安全保障・電力安定供給というのは国の基盤だから。
 閑話休題、話を戻そう。
 企業の取締役から作家に転向した宮脇俊三氏が、談話集『私の途中下車人生』(手元にあるのは角川文庫)の中で労使問題について興味深いことを述べている。

 大きなストライキなどがあり、会社が危機におちいると、組合内部に穏健派が台頭し、過激なほうの派と対立しだすのは一般的な図式ですが、(中略)まもなく穏健派が主導権を握るようになり、だいぶ交渉がしやすくなってきました。

 なぜこの一冊だけ「談話集」という形式で出版したのだろう? 中央公論社時代のことは書きたくない、と渋るのを誰かが説き伏せ、聞かれたことに答える形でなら公表してもよい、という妥協に漕ぎつけたのかな? と想像を膨らませたりしているが、それはさておき、会社が経営破綻してしまっては組合活動どころではなくなるので当然の話ではある。
 そこで問題となるのは「潰れない組織の組合」である。よく知られているのが1970年代の"日本国有鉄道"。当時、まさか十数年後に国鉄が解体されるとは誰も予想せず、組合員はやりたい放題になっていった。
 西欧諸国では国有鉄道の赤字を年単位で国が、すなわち税金で補填するのが当たり前で、この場合「累積赤字」は発生する余地がない。なぜ日本では赤字を借入金で処理して累積赤字を積み上げたかというと、実は「国鉄労使問題をなんとかしたい」というのがそもそもの目的だったらしい。これは法学部政治学科生だった頃に論文のテーマにもした。
 同じことがNHK内部で起こっている、ないしは起こり始めている可能性が高い。
 「テロ等準備罪」が可決・成立した夜、NHKのデータ放送(ニュースについてはWEBサイトと連動しているようだ)に物凄い記事が出た。
 処罰対象が「一般人」に及ぶ危険性があるという主張なのだけれど、なんと具体例が「沖縄の反米軍基地運動」と「脱原発運動」になっているではないか。あまりのことに『誰がどこからどう考えたって「一般人」にはほど遠い左翼団体の過激派』という内容をメールフォームからNHKに送信しておいたら、やはり同様の指摘が多く寄せられたのか、翌朝になってみたら似たような趣旨の違う記事が掲載されていて"具体例"はなくなっていた。
 沖縄の米軍基地周辺で実際にどのような暴力行為が行われているかをNHKはまったく報道せず、平然と「市民団体」なる語句を使っているのは周知のとおりながら、どうもいまだに内部にはこの種の前時代的な印象操作が有効と思い込んでいるのがいるらしい。
 不可解なのは、巨大メディアによる印象操作が効果絶大だった時代……つまりインターネットの普及する以前、NHKの報道内容は非常に客観的・論理的であり、NHKニュースへの批判といえば「事実をただ報じるだけだからつまらない、日常生活にそれがどう影響するのか分かりにくい」というのが常套句だったことである。これをどう理解すればいいのだろう? インターネットの普及により組織外部との連携が容易になり、労働組合を媒介として外部から過激な左翼思想が流れ込むようになった、という、ありきたりの仮説しか浮かんでこない。
 もう一つ不可解な現象がある。
 インターネット上に「朝日新聞」への批判が溢れかえっているのに、ほとんど同じことを報じているNHKについては『朝日新聞やNHKは』という一括りの記述しか出てこないどころか、政権寄りだとか右傾化*だとか首を傾げる検索結果まで表れる。
 朝日新聞は読まなければよい。報道ステーションは見なければよい。しかしNHKは見ようが見るまいが視聴料を払わなければならない(罰則規定はなく、強制的な徴収には個別の司法手続きが必要らしいが)。その意味では朝日新聞よりNHKの方がはるかに悪質としか思えないのだけれど(あっ、筆者は視聴料をきちんと払ってますよ、スポーツ中継とN響定期公演はよく見るから)。
 新聞と違いNHKはデータ放送もWEBも記事の入れ替わりが早くて、インターネットといえど拾い切れていない可能性はある。しかし、もしかすると検索結果がコントロールされているのではないかと考えると恐怖を覚える。中国政府の場合は、検索結果から当該ページに飛べなくする、という手法だと聞いているけれど、NHKがさらに高度な独自技術を密かに開発して検索結果そのものを操作している可能性はないだろうか。インターネット特有の「世論」として、国益を損ねるような報道ないし行動はみんな在日外国人(ここではあえて国を明示せず)が悪いと決めつける傾向があり、この方向によるNHK批判だけわざと検索にかかるように誘導していると仮定すれば、何かにつけ辻褄が合ってくるのは気持ちの悪いほどだ(理系の読者に「あり得ない」と嗤われるかもしれない。でも何十年かの後に不正アクセス発覚などと騒がれても、筆者は驚かない)。
 沖縄における反米軍基地運動の報道ぶりはNHKの左傾偏向を最も端的に物語るものではあるけれど、インターネット上の情報を総合的に判断すると、韓国籍を持つ北朝鮮の工作員が入り込んでいるという解釈が妥当のように思う。"民間-民間"という範囲では日韓関係がそう険悪であるとも考えられず、NHKが『それ見ろヘイトスピーチだ、こんな情報源が信頼できるものか』という印象操作に悪用しかねない「ネット世論」の現状はむしろ国益を損ねていないだろうか。もっとも、じゃあ韓国の反日団体が行っている歴史捏造を黙って見てろとでも言うのか? と詰問されれば「うーん、それはそうだけどムニャムニャ……」と口ごもってしまいそうではある。
 いっそのこと、国会中継だけを行う「国営放送」を設け(閉会中などは放送休止にすれば費用もたいした額になるまい)、NHKを廃止してしまえばいいのだろうけど、日本で最も能力の高い「NHK交響楽団」を潰してしまうのは惜しい。独立させて技量の維持向上と経営の健全性を両立させるのは難しかろう。芸術はカネにならないと思っておいた方がいい。
 憲法改正よりはNHK抜本改革の方がハードルは低そうに見えるのだが、手を着けてくれませんかね、安倍総理(後記。結局は何もなし。評価はしてますよ、安倍政権そのものは)。

 

*あまり確かな情報ではないのだけれども、どうも朝日新聞またはその関連メディアが「NHKは右傾」というキャンペーンをやっているらしい。2017年後半あたりから、ようやく「"NHK" "偏向"」のキーワードで『左傾』偏向を指摘する個人のサイトやブログがたくさん出てくるようになった。多くの国民が"異変"に気づき始めたようである。

 後記。安倍氏が首相を退く前後から、ついに「NHK改革」が議題に乗り始めた。槍玉に挙げられている「視聴料徴収業務へ多額の経費が計上されている」件だが、字義通り受け取ってよいのかどうか。実際には左翼団体の活動費(反原発だの反米軍基地だの)へ流れている疑いが強く、徹底究明が求められる。

 

 さらに後記。NHKは政権寄り偏向報道だ! という主張をよく見ると「開いた口が塞がらない」荒唐無稽ぶりである。モリ問題だかカケ問題だかもう忘れたが『(素行不良で)クビになった役人より内閣総理大臣の発言を流す時間が何十秒か長い! 同等に報じていない! 政権寄りだ!』とやってみたり、選挙が近づくと『与党が優勢だと嘘の報道をしている! 政権からの圧力だ』……競馬の予想じゃあるまいし、なんで与党優勢の報道が政権支援になるのだろう?
 実を言うと、民主党政権が誕生したときの衆院選で、筆者は一瞬『今回だけは民主党に投票してみるのもいいかな』と考えたことがある。しかし「民主党がきわめて優勢、いよいよ政権交代か」なんていう報道を見て『これ、危険だぞ』と自民党に鞍替えしてしまった。無党派層ならそれが普通の反応だろうに。
 筆者は今も昔も"積極的な"自民党支持ではなく、以前の選挙制度下では弱小政党がたくさんあったので『自民党はイヤ。左翼政党はもっとイヤ』とばかり、意図的に死に票を(もちろん『まかり間違って躍進しても害にならない』候補者は選んで)投じていた。今は野党の無能ぶりとメディアの左翼政党支援が恐ろしくて、自民党以外に入れられない(公明は論外。橋下徹が大嫌いなので維新もナシ)。

 


データ放送画面から(2024)。どこの国の公共放送??

 

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