ときには妄想を Part.II
●三江線跡を無人運転BRT実験線に出来ないか
過去の事実として、ローカル鉄道路線をバスにした場合、乗客の減少に加速度がついて結局はバスも廃止、公共交通機関が何もなくなってしまう、という事例が全国で発生している。なぜそうなるか、というのを利用者の視点で考えてみると、やはり「駅」が存在することの重要性が浮かび上がる。沿線人口の減少という事実を認めない訳ではなく、税金をつぎ込んででも鉄道を残せ、と主張するつもりもないけれど、鉄道とバスの間にある落差を埋める手立てはもっと考えるべきではないか。
道路傍にポールが一本あるだけのバス停で、走り去るクルマが巻き上げる砂塵を浴びながら時刻表通りには来ないバスを待つのと比較すれば、どんな貧弱な設備でも「駅」の方が安心・安全・快適である。
そこで妄想。
建設年代が新しく踏切の少ない区間を有する三江線跡は「無人運転BRT実験線」として最適。ここで、無人運転技術(初めのうちはATSの代わりとして使うのも有効だし、信頼性が上がってくれば複数の車体をまとめて走らせる擬似連結運転だって可能な筈)の確立を目指し、鉄道と変わらない表定速度でのBRT実用化を目指てはどうか。終始専用道の上を走らせることで定時運転の確保も容易になるし、無人運転も一般道路と比べればはるかに現実的だ。
「駅」があり、よほどの悪天候でない限り定刻に車両がやってきて、所要時間も鉄道と変わらない……という水準まで持ってくることが出来れば、バスとLRTの中間的な輸送力を持つ低コスト公共交通機関として、将来性は大きいと思う。鉄道と違って地上設備は一車線の舗装道路だけでよい。中心市街地のみ完全立体交差として郊外には踏切(専用道側に遮断機を下ろし、車両通過時のみ上昇、かつて富山地鉄射水線跡のバス専用道で使用実績あり。妄想としては遮断機を水平に90度回してBRT通過時に道路を塞ぐ方が良い)だって設けられる。「行き違い駅」に出発信号機代わりの踏切型遮断機があれば、安全側線の代わりになろう(もし同時多発的なエラー発生で遮断機を突き破ったら、自動運転とは別系統の非常ブレーキを作動させる)。
地方創生などという看板を掲げるのなら、国も積極的に後押しすべきである。姫新線の上月-東津山(専用道を新設して佐用-津山の運転とするのが望ましい)、芸備線の三次-備中神代(備後庄原辺りから東はBRTも不要か……)と福塩線の非電化区間など、区間外との直通運転ナシ、2両以上の連結運転ナシ、車両床面積はバスと大差ナシ、の無い無い尽くしのところはもはや"フル規格鉄道"存続の意義を失っている。線路の撤去とBRT路盤の整備を国費で行い運営はJR西日本に任せれば、公共交通の"持続可能性"が高まるのではないだろうか。さらに、幹線鉄道と「コンパクトシティ」を結ぶ"新線"の開業も決して夢物語ではないと思う(営業上は鉄道路線とし、既存鉄道との結節点では改札内、同一プラットホームでの乗換が理想)。
1990年代なら、姫新線・芸備線を「フル規格」で残しておくのは災害時の迂回ルート確保として有効だったけれども、ディーゼル機関車も波動輸送用の客車もろくになくなった今では意味がない。
津山・新見・備後落合経由で姫路-広島を通り抜ける『瑞風』の運転でも始まるのなら話は別だが……(もし実現したら何十万か払ってでも乗りたい!)。
(この文章を書いたのは西日本豪雨による水害発生の前である。気仙沼線の轍を踏んでこのまま廃線か、三江線のように一旦は復旧させて「JR東日本ほど無責任じゃないぞ」というポーズを取るのか(後記。少なくとも一旦は復旧させる方針のようだ)。BRTなら仮説道路による暫定的な復旧も容易になりそう。妄想に妄想を付け加えると、災害時にも、安易に「一般道路へ統合」させないのが最も重要だと思う)
画像は三江線宇都井駅(1997. 8) |
●鉄道の「付帯サービス」はIT化に乗り遅れた
定期夜行列車がついに「サンライズ出雲・瀬戸」だけになってしまった。実は、夜行列車廃止の要因が「利用者減少」だったのは「富士・はやぶさ」辺りまでで、その後は専ら「車両の老朽化」が理由、そして、需要があるのに投資をしなかったのは「建設中の新幹線が開通すると線路が自社のものではなくなるから」というのが最大要因である(何たる不条理)。
といっても、「サンライズ出雲・瀬戸」も運営側が期待したほどの起爆剤とはならなかった事実は認めざるをえないのだけれども、筆者にはどうもあの列車は「仏作って魂入れず」だったという気がしてならない(アッ、思わず過去形で書いちゃった……とあえて訂正せずに追記)。
「サンライズ」用寝台電車の登場は1998年。仮に、もう5年早い1993年にあの車両が登場していれば、もっと効果があったのではないかと思う。1998年といえば、ちょうど「Windows98」が世に出た年で、その後の社会は一気にインターネット時代へと突き進むことになる。ところが、いまだに指定券の予約はインターネットもみどりの券売機も『個室寝台は予約出来ません』のまま、これじゃ「新幹線+ホテル」に客が流れるのは当然である。2000年代に入ってからも、初めのうちはホテルのインターネット予約だって原始的で、予約申し込みが電子メールに近い形でホテルに届き、手作業で空室確認をして折り返し電話がかかってくるという「最初から電話した方が早いがな」と言いたくなるシロモノだったのが、あれよあれよという間に進化して、いつの間にやら「ホテルを電話で予約? なんで今時そんなことを」という状況に変わってしまった。鉄道の「マルス」システムを一歩先へと進化させる時間的余裕は十分あった筈なのに。「北斗星」等のA寝台個室では買占め高額転売の恐れがあったろうが、需給関係にゆとりのあったB個室はさっさとインターネット予約に対応させるべきだった。
もう一つ。車内販売がなんとか機能しているうちに、どうして「駅弁の事前予約サービス」を構築しなかったのかが不思議でならない。最後期の食堂車がそうだったように、前日までの代金先払予約が必須かつ当日キャンセル不可にしておけば、売れ残りの心配がなくメニューの選択肢もむしろ広げられたのではないかとおおいに悔やまれる。
指定券のインターネット予約が完了すると、画面に購入予約可能な駅弁と積込駅の停車時刻が表示され、予約が完了すれば特急料金や寝台料金と一緒にクレジットカードで決済される……という世界、そんなに実現可能性の薄い妄想だったろうか?
蛇足。時刻表から「弁」記号が消えた駅の売店で、コンビニ弁当みたいなものを売っていることがままある。ならば「そもそも駅弁とは何ぞや」という疑問が生ずる。昔は「改札内で立ち売りをする権利」を付与された業者の手によるものを駅弁と呼んでいた筈だが、もしかして未だに既得権益として新規参入障壁だけが残っている? インターネット検索は「そっちの"駅弁"じゃなくてぇ」と言いたくなる情報がやたらと出てくるので厭になって中断(良い子は真似をして検索してはいけません)。
●無人運転貨物新幹線を造ろう
ここでの「新幹線」とは、新しい幹線を意味する普通名詞である。軌間は当然1067mmで在来線と線路をつなげる。車両限界、建築限界は船舶コンテナを無理なく運べるよう若干拡大、将来的には主要貨物駅から新線との分岐点までをこれに合わせて改良すればよい。速度は現在の高速貨物列車と同じ水準で十分と思う。
技術的にはすぐにでも建設可能なのではないか。
貨物駅を発車したコンテナ列車はしばらく在来線を走り、平野部のはずれで新線に入る。まもなく6~8線の小ヤードに到着、ここで機関士が運転席から降り、休憩所に向かう(ヤードは災害や事故の時に列車を一時的に収容するためのもの)。
数分後、無人の列車が動き始め、加速しながらトンネルへ消える。気象条件によるブレーキ性能変動を小さくするためと、保守面・騒音防止の観点から、この貨物新幹線は基本的に山岳トンネルまたは地下トンネルとなっている。トンネルから姿を現した無人列車がヤードに停まると、休憩所から出てきた機関士が乗り込み、制御器を握って在来線へと列車を走らせる。
いわゆる"新幹線"ほどの高速ではないのだから、中間駅として在来線との連絡線を設けるところは渡り線とデルタ状分岐とすれば用地の確保がし易くなる。地形的に連絡線建設が無理なところは着発線荷役の中間駅とするのも有益だ。
既存の技術で可能な話だからあまり書くことがない。高速道路でトラックの無人運転とか、なんでそんな実現可能性の低い難しいことばかりやりたがるのかが筆者には分からない。無駄な整備新幹線とか高速道路とかに使う税金をさっさとこれに回すべきである。これこそ本物の"国土強靭化"ではないか。
あ……今は機関士って言わないんだっけ(齢)。
JR貨物の社長がBS民放のある番組で「夢は東海道貨物別線の建設。需要はある」と言っていたほどで、この項はあながち妄想でもない。コンテナには興味がないから趣味的に面白いことは何も起こらないのだけれど(苦笑)。
バックナンバー目録へ戻る際はタブまたはウィンドウを閉じて下さい