高校時代、進学校の上に男子校とあって、いい思い出というものはほとんどない。今から考えても、いい教師より厭な教師の方が多かった(明らかに指導能力が低いのに異常なほど高慢だったり)。ただ、これとて全く尊敬の念は持ち合わせていないけれども、校長の口癖だけは印象に残っている。
−いいことが続くときも、悪いことが続くときも、「こんなことはいつまでも続かない」と思え。
人間とは贅沢なもので、いいことが続いているのには気づかない。歯車が狂いだして初めて、いままで調子が良すぎたのかなあ、という思いがよぎる。
振り返っても仕方がないので詳細はすべて伏せるとして、筆者にとって2004年前半はなかなかいい時期であった。それが、秋口から可怪しくなってきて、何をやっても裏目に出るようになった。
そもそも、筆者は旅先でのトラブル、ことに列車の遅れや運転打切に関して滅多やたらと経験が豊富である。
1988年8月 紀勢本線 下り臨時快速「サマーイン白浜」 機関車故障のため紀伊由良駅で運転打切。
1991年2月 信越本線 上り寝台特急「トワイライトEXP」 土砂崩れのため長岡駅で運転打切。
1996年7月 函館・室蘭本線 下り特急「北斗」 集中豪雨と落雷のため3時間20分遅延。
2000年9月 高山本線 上り特急「ひだ(大阪行)」 集中豪雨のため5時間7分遅延。
派手なものだけ並べてもこうなる。逆に、出発から帰着まですべて定刻に運転されたことの方が少ないような気がする。2004年の夏から台風と地震の連続で、何も筆者だけが不運に見舞われている訳ではないけれど、どうも「只見線」は呪われているとしか思えない。
2004年10月23日 SL列車運転日 中越地震発生。
2005年2月5・6日 会津川口〜只見間臨時普通列車運転予定のところ、会津川口以西大雪で不通。
2005年3月19〜21日 SL列車運転予定のところ、土砂崩れで会津宮下〜只見間不通。
このコーナーに何度か書いた通り、SL列車には興味がないけれど、なにしろ全列車に車掌が乗務(もちろん車両は国鉄型)という奇跡のようなローカル線だから、臨時普通列車が走って本数が増えるとなるとじっとしてはいられない。
3月のSL列車運転日にも、接続便として只見〜小出間に臨時普通列車が設定されていた。上旬、インターネットで運転状況を毎日調べていると、大雪のためしばしば列車が止まっており、本当に走るかどうか分からないので、一応の撮影計画を組んだまま何の手配もしないでいたところ、会津宮下駅の西側辺りで土砂崩れが起きた。しかも、雪のため復旧作業が不可能とのことである。
これでSL列車の運転は中止が確実となった。
となると、只見〜小出間の臨時普通列車はどうなるのだろう? NHKで「復旧までには1ヶ月以上かかる見通し」という報道があった翌日(3月15日)、JR東日本の「テレフォンセンター新潟」に問い合わせてみた。名前の印象に反して、いかにも現場のオッサンという感じの人が電話に出た。
「只見線の運転状況を知りたいのですが」
「マスコミ報道でご存じかと思いますが(声とともに書類をめくる音)、土砂崩れがありまして、会津若松〜会津宮下と只見〜小出で折り返し運転を行っております」
「今週末、19日から21日まで、小出と只見の間に臨時の普通列車がありましたよねえ」
「ええと、しばらくお待ち下さい。……(この間1分以上)……はい、おっしゃる通り、ございます」
「これは、当日この区間に支障がない限り運転されるんですね?」
「そういうことです」
以上のやりとりは、要約をせず記憶に残っている限り忠実な再現を試みた。電話を切った後、思わず声に出して「ホンマかいな」と呟いたのを覚えている。
後になって「予定通り走りました」ということになると後悔するに違いないから、天候が安定していることを確かめてホテルを予約し、慌ただしく旅立った。前日になって新潟付近だけ予報が悪化し気を揉んだが、天候に関してだけは幸運を維持しており、21日は素晴らしい晴天となった。
しかし、長岡駅には「SL列車」と並んで「アクセス列車」運転取りやめの掲示がしっかりと貼られていた。2月の「磐越西線代行バス事件」では頭に血が昇ったけれども、このときは腹も立たなかった。問い合わせを受けた時点では設定取消の通知が来ていなかった、と言われれば反論のしようがない。もし俺が来なかったらきっと予定通り走ったのだろうと、そんな思いがしただけであった。
定期列車の撮影は出来たのだから、成果がなかった訳ではないけれど、定期列車だけを撮るのなら、何も列車の混雑する連休なんぞに行く必要はないのである。時間の融通は十分に効く。
どうしてこうなるのか? 事前の情報収集として、これ以上どうすれば良かったのか。出発直前まで同じ問い合わせを毎日続けろというのか?
過去の経験からして、何をやっても裏目に出るという事例が続くと、やがて何をする気もしなくなる。今年(2005年)は「最近の写真から」コーナー閉鎖の時期が早くなりそうだ。
只見以西のダイヤグラム(2005. 3.19〜21)。臨時列車が無いとなると…… |
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